1994年に出されていた統一教会に関する質問主意書が生かされていたら

1994年に出されていた統一教会に関する質問主意書が生かされていたら

 

元オリンピック選手や歌手の桜田淳子が合同結婚式に出るなどで注目を浴び、統一教会の霊感商法やマインドコントロールが問題になった1990年代、弁護士の北村哲男氏から政府に向けて統一教会の問題点を指摘する質問主意書が出されていた。

その中には、今もマスコミで指摘されている統一教会の霊感商法や詐欺的手法、反社会的な行動が指摘され、「本質的に宗教団体とは認めがたい」こと、「統一協会には宗教法人法第八十一条に基づく解散命令を含む厳しい措置がとられてしかるべきである」との考えが示されていた。

それに対して当時の村山富市首相は、「政府としては、一般的に、特定の宗教団体が反社会的な団体であるかどうかについて判断する立場にないと考える」と最初に断言し、その後も終始煮え切らない回答になっている。

この質問主意書と回答を以下に添付する。

また、その後、この問題はどうなったのかというと、2005年、2006年の公安は報告書で「特異集団」として統一教会の問題点を記録していた。

ところが2007年、第1次安倍政権が誕生した翌年から、この項目が消えている。

「特異集団」が統一教会を表すものだということ、それが2007年に消えたことについては、朝日、毎日などが記事にしている。下は朝日の記事へのリンク。

「特異集団」は旧統一教会 公安庁報告書、安倍政権下で項目消える

https://www.asahi.com/articles/ASQ8H5SRWQ8HUTIL01W.html

 

 

世界基督教統一神霊協会に関する質問主意書 北村 哲男

平成六年六月二十三日

世界基督教統一神霊協会に関する質問主意書:質問本文:参議院

以下、全文転載

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参議院議長 原 文兵衛 殿

   世界基督教統一神霊協会に関する質問主意書 北村 哲男

 一昨年、新体操の元オリンピック選手の山崎浩子さんや女優の桜田淳子さんら芸能人の入・脱会騒動で世間を騒がせた統一協会(世界基督教統一神霊協会=教祖文鮮明)は、霊感商法をはじめとして、宗教団体としてあるまじき様々の反社会的事件を引き起こしていることはよく知られている。去る五月二十七日に福岡地裁は全国で初めて統一協会の霊感商法に対する損害賠償請求訴訟で原告の主張どおり統一協会の関与と賠償責任を認め、三千七百六十万円の支払いを命じる判決を出した。
 そこで以下の点について質したい。

一、統一協会は霊感商法といわれる詐欺的脅迫的手口によって印鑑、人参液、壷、多宝塔、絵画、呉服、宝石、仏具などを法外な値段で売るなど、信者に違法な資金集めをさせて多くの被害者を生み、社会的に厳しい批判を受け、国会でも追及されたことは周知のとおりである。全国の消費者センターと弁護団が調べた一九九三年の数字でも被害件数二千百五十三件被害金額は百二十一億九千二百万円余の巨額にのぼっている。最近は「HG」(早く現金)といわれる資金集めに力を入れ、土地、建物を担保にとった融資の形で多額の金を詐取する手口が用いられており、なかには億単位の被害も珍しくない。東京三鷹では一家で五十六億円余をだましとられた例もある。この件を契機にして三鷹市議会では決議が出されている。現在多くの被害者たちが統一協会を相手取って損害賠償請求などの訴訟を起こしている。
 また統一協会に入り、貴重な青春時代を奪われた元信者たちは、その間の損失利益、慰謝料などの損害賠償を求めて全国各地で「失われた青春を返せ」訴訟を起こしている。
 さらに文鮮明教祖によって見も知らぬ相手と組み合わされ合同結婚をさせられた元信者たちは婚姻無効確認を求める訴訟を起こしている。
 統一協会側が従来、第一の霊感商法に対する訴訟では敗訴が明らかなため和解しているケースが多いことを考えると、今回の判決の持つ意味は重大である。これら三種類の訴訟が行なわれているという現実から統一協会は明らかに反社会的な団体であると考えられるが、政府としてはどう判断するのか。

二、統一協会の勧誘方法は、駅頭や街頭などでアンケートや手相見などの手段で接近して人生相談や悩み事相談に乗る形をとり、大学のキャンパスでは原理研究会というクラブ活動の形をとって勧誘しているのが通常である。統一協会の名を隠し、宗教団体ではないと偽って勧誘するため、学生や未成年者など純粋で真面目な青年男女ほどだまされやすい。いったん勧誘に応じると、マインドコントロールといわれる方法で信者にされてしまうのである。このため、大学のなかには入学シーズンに新入生を対象に警告書を配付している大学もある。このようにまず勧誘の仕方からして詐欺的で異常である点からも、統一協会は宗教団体として適格性を欠いていると考えられるがどうか。

三、統一協会は国際合同結婚式、いわゆる集団結婚でよく知られている。一昨年夏にも約三万組の合同結婚式がソウルで行なわれた。結婚相手は本人の意思とまったく無関係に文鮮明教祖の指名によって一方的に決められる。これはまさに「両性の合意のみに基いて成立」するという憲法第二十四条に反する。このような結婚は、親、兄弟、親戚も反対し深刻な家庭悲劇を全国各地で起こしている。この点からみても統一協会の反社会性がきわめて強いことは明らかであるが、どのように考えるか。

四、教祖文鮮明は一昨年三月末にわが国に入国した際、通常では入国できないケースであったにもかかわらず、当時の金丸自由民主党副総裁に働きかけ、特別扱いをうけたといわれている。その背後では信者から集めた多額の資金が政治資金として動いたと指摘されている。また、統一協会のいわば政治団体であり、統一協会と一心同体の関係にある国際勝共連合は保守系議員の選挙運動の応援を行なっており、とくに当落すれすれの候補や組織の弱い新人あるいはこれはと思う候補のところに協会員を大量に運動員として派遣し、当選すると私設秘書を送り込むなど、政治家との結びつきを強め政界への浸透をはかろうとしている。私たちは政治改革を最重要課題として取り組んでいる立場からも、こうした政治をゆがめる動きを看過することはできないと考えるがどうか

五、以上申し述べた点から、統一協会は反社会的な性格の団体であり、本質的に宗教団体とは認めがたい。
 少なくとも宗教法人法にのっとった宗教団体として認めることはできないと考えざるをえない。従って統一協会には宗教法人法第八十一条に基づく解散命令を含む厳しい措置がとられてしかるべきであると考えるが、政府の見解はどうか。

六、統一協会が霊感商法等の手口で集めた資金は宗教法人法第六条第二項に違反して使用されていると考えられる。例えば統一協会は株式会社ハッピーワールド名義の新宿教会を担保に同社が韓国第一銀行から借金するにつき連帯保証している。このような事実を調査の上、同法第七十九条第一項に基づきその事業停止を命じるべきではないか。そのための同条第四項の手続きをとるべきではないか。

七、税務当局者は統一協会信者らの前記の如き資金集めについてどのような調査をしているのか。

八、少なくとも前会長藤井氏が対外的にこの債務が四千億円にのぼることを認めていることにかんがみても、日本法人が集めた資金の大部分がアメリカ合衆国や韓国の文鮮明とその周囲の組織に提供されていると考えられる。このような多額の資金流出の事態は金融機関や多くの市民の債権回収を不能にすることになると考えられるが、当局はどう対応するのか。

  右質問する。

ーーーーー転載終わり。

 

政府の回答 答弁書第九号 内閣総理大臣 村山 富市

 

ーーーーー以下、全文転載ーーーー

答弁書第九号 内閣参質一二九第九号  平成六年七月十二日

内閣総理大臣 村山 富市

参議院議長 原 文兵衛 殿

参議院議員北村哲男君提出世界基督教統一神霊協会に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

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参議院議員北村哲男君提出世界基督教統一神霊協会に関する質問に対する答弁書について

 宗教法人「世界基督教統一神霊協会」(以下「統一協会」という。)に関係して、御質問にあるような訴訟が提起されていることは、報道等により承知している。
 しかしながら、政府としては、一般的に、特定の宗教団体が反社会的な団体であるかどうかについて判断する立場にないと考える。

二及び五について

 我が国においては、憲法に信教の自由の原則が定められており、宗教団体を組織し、宗教活動を行うことは、基本的に自由である。もちろん、宗教団体に法令違反の事実があるような場合は、これに関する法令の規定が適用されることは当然である。
 ところで、宗教法人法(昭和二十六年法律第百二十六号)に規定する宗教団体とは、宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とし、神社、寺院、教会等の単位宗教法人の場合には、礼拝の施設を備える団体であるが、現在のところ、所轄庁である東京都知事は、統一協会がこの要件を欠いているとは判断していない。
 また、同法第八十一条に基づく解散命令は、所轄庁等の請求等により裁判所が行うことができるとされているが、現在のところ、所轄庁である東京都知事は、統一協会について、その請求を行うべき場合に当たるとは判断していない。

三について

 婚姻当事者に婚姻意思があったか否かは、個々の婚姻ごとに判断されるべき問題であり、それに関する紛争は、最終的には司法により解決が図られるべきものであって、政府としては、一般的に婚姻意思の問題について判断する立場にないと考える。

四について

 政府としては、現在、御質問の統一協会ないし国際勝共連合の活動の詳細については承知していないし、また、御指摘のような問題について、判断する立場にないと考える。

六について

 宗教法人法第七十九条は、宗教法人が行う公益事業以外の事業の停止命令について規定しているが、統一協会の所轄庁である東京都知事は、いわゆる霊感商法については、現在、統一協会の規則には事業として記載されておらず、また、統一協会が行っている事業であるという確証もないことから、現在のところ、同条を適用することは基本的に困難であると判断している。

七について

 御質問の課税上の問題については、個別・具体的な事柄であるので、答弁を差し控えたい。

八について

 宗教法人法においては、宗教法人に対して、所轄庁への収支報告義務を課していないので、所轄庁において、宗教法人の資金の流れを把握することは困難である。また、宗教法人の財産の使用、処分については、法令の規定に違反するような場合を除き、基本的にはその宗教法人の自主的な判断にゆだねられているものと考える。

ーー転載おわりーーー

今と同じで煮え切らない。被害者の数も被害額も尋常ではないというのに。しかもそのお金が外国に流れていたというのに。

村山政権は自民党・社会党・新党さきがけの連立政権でした。

自民党の政治家が裏からストップがかけていたのでしょうか。

公安調査庁の報告書に「特異集団」として統一教会の記録

公安調査庁には、国内外の治安をまとめた「内外情勢の回顧と展望」という報告書がある。

こちらの2005年、2006年度版に「特異集団」という項目がある。

これは、統一教会のことを指していて、村山政権で、統一教会の解散命令はできなかったもののその後も公安は「統一教会」の名前を伏せて「特異集団」としてマークしていたことがわかる。

その特異集団の項目は、2005、6年にはあるものの、2007年の安倍政権になってから消えている。

平成17年版(2005年)

(平成13(2001年)年から17年(2005年)まで、小泉政権)

平成17年「内外情勢の回顧と展望」(平成17年1月) | 公安調査庁
公安調査庁のウェブサイト

内外情勢の回顧と展望(平成17年1月)(2005年)

特異集団の記載あり。

内外情勢の回顧と展望(平成17年1月) | 公安調査庁
公安調査庁のウェブサイト

〈地震,異常気象などによる不安や不透明な朝鮮半島情勢などに乗じて会員を拡大〉

 会員数100万人を達成したとする集団が,「自派の宗祖に帰依しなければ日本は滅びる」とする冊子を作成し,4月以降,これを各界関係者らに一方的に送付したほか,勧誘活動の一環として,全国規模での配布を実施した。同集団は,こうした活動を展開する中で,相次ぐ異常気象や地震による災害などを亡国の予兆ととらえ,「いよいよ亡国の大難が起こる時を迎えている」などと不安感をあおりながら勧誘活動を更に活発化させた。
 また,不透明な朝鮮半島情勢を背景に,「国内外の韓民族の和合と統一を図り,南北の平和統一に貢献する」として,我が国において,在日韓国・朝鮮人の糾合を目的とする新組織を設立し,これら在日関係者を取り込むことで勢力拡大を図る動きをみせた集団もあった。
 このほか,特異集団の多くは,独自の教義・理念に基づき,様々な主張を展開しており,クローン人間の実現を公言している集団が,日本国内に拠点施設を建設するとして会員にカンパを呼び掛けたり,各地を移動して注目を集めた白装束集団が,離散した会員の再結集を図るとして改めて“日本の壊滅”を予言する動きもみられた。
 こうした特異集団は,危機感や不安感をあおった上で,勢力拡大を図っており,その特異な言動には,引き続き注目を要する。

 

平成18年度版(2006年)

(9月まで小泉政権、9月26日からは第1次安倍政権)

特異集団の記載あり。

特異集団は,社会通念とかけ離れた主義・主張を掲げ,平成17年中も,これに基づいた特異な活動を展開した。
「かつて首都圏での大地震を予言し,これに乗じたクーデター計画を目論んでいた」などと報道された集団は,一連の報道を機に,会員を対象とする儀式をマスコミ関係者に公開する一方,クーデター計画については「会員に覚悟を持たせるためで,実現の見込みはなかった」旨主張してこれを打ち消す動きをみせたが,6月には,同集団の関連会社運営をめぐり,社員に給与の一部を返還させる手口で資金を不正捻出したとして,3年間で1億3,000万円の申告漏れが指摘され,約3,600万円が追徴課税される事案が発覚した。
また,10年以内に300万人会員の達成を目標とする集団が,相次ぐ自然災害をとらえて「巨大地震・異常気象は大闘争の前兆」などと恐怖心をあおり,「男子精鋭十万の結集で亡国日本を救わん」と訴えて布教を呼び掛けたほか,大学生などの若年層を対象として,執拗な勧誘を展開し,監禁容疑で逮捕され関連施設などが家宅捜索される事件(7月)を引き起こすなど,社会との軋れきを顕在化させる動きもみられた。
このほか,「朝鮮半島の統一」を標榜して,我が国で在日韓国・朝鮮人を糾合する新組織への結集を目指し,これら在日関係者を韓国の大会に参加させるなどして,在日組織との間で軋れきを生じさせるといった動きを示す集団もあった。
こうした特異集団は,引き続き,独自の主義・主張の具現化に向け,危機感や不安感をあおって勢力拡大を図っており,その過程で不法事案を引き起こすことも懸念される。

平成19年度版

(2007年、安倍政権)

「特異集団」の項目が消えている。

「内外情勢の回顧と展望 ―深刻化する核・テロ問題及び混迷する国際情勢と日本―」(平成19年1月) | 公安調査庁
公安調査庁のウェブサイト

消えた「特異集団」の記録

村山内閣で、「政府としては、特定の宗教団体が反社会的な団体であるかどうかについて判断する立場にない」と回答して解散や対策ができなかったものの、公安は、その後の小泉政権下では「特異集団」として監視していたことがわかる。

それが2007年には消えている。

その当時、統一教会はどのような状態だったかというと、関係する刑事事件、訴訟事件が以下。

塚田穂高さん出典、統一教会の刑事事件および訴訟の判決 まとめ。

2007年〜

これだけの刑事事件や訴訟事件を抱えていても、解散命令が政治の力で止められていたのだとすると大変な問題ではないのか。

1996年に全国霊感商法対策弁護士連絡会は、統一教会にも解散請求を出すよう文化庁に何度も申し入れていた。

しかし、文化庁文化部総務課は「解散請求まではできない」と回答した。

本村弁護士 『統一教会の線引きを何処が調べるか?→今までは被害者が個別に対応をするしかなかった。実際には文部科学大臣が宗教法人法で解散命令をする権限がある、しかし文化庁宗務課としては非常に消極的な対応しかして来なかった。これをガツンと「やれ!」と言わせるのが政治家です』

下は9月初めのミヤネ屋での本村弁護士の発言。こちらの「桃太郎」さんのツイートにいくと残りの動画も見られます。

解散命令を阻止しているのは政治の力?

おかしなことは今も続いている。

1994年に解散命令を出せなかったことで、日本人の被害者は増え続けた。

この時解散していれば、山上容疑者が安倍元総理を銃撃することもなかったかもしれない。

今もまた、同じことを繰り返すなら、日本はこれからも変われない。

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